遠く離れた土地の、氏神の祭り
大きく、ゆっくり、沈む夕陽
それに見向きもしない地元の酔っ払いと、
肺から声を出して駆け回る子供達
投げられる餅、奪われる餅
餅!もち!モチ!Mochi!
小津の映画みたいだ、と旧友は言った
こんな気持ちで浜辺に座ったのはいつぶりだろう
もしかしたら毎度のこと、もしかしたら初めて
時間が止まるほど美しいってのはこれさ!
ふと振り向くと、彼は泣いていた
昔の恋人のことを思い出したらしい
小津安二郎の『東京物語』が好きな男だった
私も会ったことがある、
煙草をよく吸う男だった
静かに哀しみ、静かに腹をたてる男だった
セックスを嫌う男だった(らしい)
今わたしたちの目の前で
浜辺に寝転がるのんだくれの姿に
その男の幻影を見る
細く頼りない背中はなにも語ってくれない
いつの間にか、彼の啜り泣きと私の貰い泣きは
波の音と、地元の人の声に掻き消された
"that fucking asshole"
そうさ、いつだって笑ってやるさ