銀座 Black Heart

2025年10月16日木曜日

潮騒(蓮)

きっと今年の海終い

遠く離れた土地の、氏神の祭り
大きく、ゆっくり、沈む夕陽
それに見向きもしない地元の酔っ払いと、
肺から声を出して駆け回る子供達

投げられる餅、奪われる餅
餅!もち!モチ!Mochi!

小津の映画みたいだ、と旧友は言った

こんな気持ちで浜辺に座ったのはいつぶりだろう
もしかしたら毎度のこと、もしかしたら初めて

時間が止まるほど美しいってのはこれさ!


ふと振り向くと、彼は泣いていた
昔の恋人のことを思い出したらしい

小津安二郎の『東京物語』が好きな男だった

私も会ったことがある、
煙草をよく吸う男だった

静かに哀しみ、静かに腹をたてる男だった

セックスを嫌う男だった(らしい)

今わたしたちの目の前で
浜辺に寝転がるのんだくれの姿に
その男の幻影を見る

細く頼りない背中はなにも語ってくれない



いつの間にか、彼の啜り泣きと私の貰い泣きは
波の音と、地元の人の声に掻き消された


"that fucking asshole"


そうさ、いつだって笑ってやるさ



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